「羽金山」の版間の差分
m Bot作業依頼: 山記事のカテゴリの貼り替え及び追加 (Category:山岳名目録) - log |
送信所の歴史を記述ほか加筆 タグ: 曖昧さ回避ページへのリンク |
||
19行目: | 19行目: | ||
'''羽金山'''(はがねやま)は、[[福岡県]][[糸島市]]と[[佐賀県]][[佐賀市]]との境界にある、[[脊振山地]]に属する山である。山頂及び三角点は、両県の県境から約70メートルの[[佐賀県]][[佐賀市]]側にある。山頂の[[はがね山標準電波送信所]]も同じく佐賀県側にある。 |
'''羽金山'''(はがねやま)は、[[福岡県]][[糸島市]]と[[佐賀県]][[佐賀市]]との境界にある、[[脊振山地]]に属する山である。山頂及び三角点は、両県の県境から約70メートルの[[佐賀県]][[佐賀市]]側にある。山頂の[[はがね山標準電波送信所]]も同じく佐賀県側にある。 |
||
== |
== 概況 == |
||
糸島(前原)市街から山頂へは、[[白糸の滝]]を通り続く林道を経て、分岐し送信所へ至る専用道路が整備されている。これは前原デッカ局時代に[[海上保安庁]]専用道路として造られたもので、「デッカ橋」と命名された橋もある。専用道路入口にはゲートがあり、一般車両は入ることができない{{R|加島}}<ref name="池田">{{Cite web|和書|author=池田浩伸 |title=ツクシショウジョウバカマの群生地を訪ね、福岡・佐賀県境の羽金山へ |url=https://www.yamakei-online.com/yama-ya/detail.php?id=2309 |website=山と渓谷オンライン |publisher=山と渓谷社 |date=2023-03-20 |accessdate=2024-03-17}}</ref>。 |
|||
⚫ | |||
⚫ | </ref>。位置は |
||
専用道路を少し進むと脇に逸れる登山道があり、東西に脊振山地の稜線を繋ぐ縦走路に合流する。山域には[[ショウジョウバカマ|ツクシショウジョウバカマ]]の群生地がみられる{{R|池田}}。 |
|||
山頂一帯ははがね山標準電波送信所の敷地である。糸島市観光協会などもウェブページで紹介しているが、入口で許可を得られれば、徒歩で敷地内に入ることができる。ただし、工事期間を除いた平日昼間に限られ、人数制限や食事禁止など、敷地内での行動は指示に従う必要がある{{R|池田}}<ref>{{Cite web|和書|title=羽金山山頂へ行かれる登山者へ |url=https://kanko-itoshima.jp/climbing/haganeyama/ |website=糸島観光サイト つなぐいとしま |publisher=糸島市観光協会 |date=2023-03-20 |accessdate=2024-03-17}}</ref>。 |
|||
=== 三角点 === |
|||
⚫ | |||
⚫ | </ref>。位置は北緯33度27分55.4723秒、東経130度10分32.6153秒、[[標高]]は900.23メートル、住所は佐賀県佐賀市富士町大字上無津呂字中敷4017番地。柱石長は0.79メートル。三角点への道のりは、点の記で知ることができる<ref>[https://sokuseikagis1.gsi.go.jp/lt/downloadFile.json?qLayerType=Base&qDataKey=TR25030115401_19970811&qDataType=Point 点の記] 国土地理院</ref><ref>[https://www.google.co.jp/maps/@33.4653894,130.1757611,3a,90y,302.34h,58.48t/data=!3m7!1e1!3m5!1sAF1QipMKrYm3g4jMhmKyAoAGQ4-TWARLvHNokCVNVNt4!2e10!3e12!7i8704!8i4352?hl=ja] Google Mapによる写真</ref>。 |
||
== 送信所 == |
|||
羽金山山頂には昭和後期から平成初期まで[[デッカ航法]]のための送信所が設けられていた。海上保安庁が管理し高さ153メートルの送信[[アンテナ]]を有していた「前原デッカ局」で、[[1969年]](昭和44年)5月1日に運用開始、星形に配置された対馬の[[上県町|上県]](長崎県)、[[長島 (鹿児島県)|長島]](鹿児島県)、佐多岬半島の[[瀬戸町 (愛媛県)|瀬戸]](愛媛県)の3か所の従局を有する北九州デッカチェーンの主局であった<ref name="町史">{{Cite book|和書|editor=富士町史編さん委員会 |title=富士町史 上巻 |publisher=富士町史 |date=2000-03-31 |p=3-4 |id={{全国書誌番号|20068539}}{{NDLJP|11517130}}}}</ref><ref name="加島">{{Cite journal|和書|author=加島篤 |title=北九州デッカチェーンをめぐる無線技術史―中距離航行用長波電波標識の建設と運用― |url=https://kitakyushu.repo.nii.ac.jp/records/280 |journal=北九州工業高等専門学校研究報告 |issue=53 |pages=21-40 |date=2020-01-31 |ncid=AA12510939}}</ref>。 |
|||
建設地選定では、初め福岡県の[[耳納山地|鷹取山]]、[[福智山]]、[[三郡山]]などに調査が及んだが適地である平坦な山頂を見つけられず、羽金山が選定されることとなった。なお、工事を担当した[[第七管区海上保安本部|第七管区]]の江並脩の手記には悪路や天候不順との闘いが記されている{{R|加島}}。 |
|||
また、1954-1963年の観測から気象庁が作成した年間雷雨日数分布図で雷雨日数が年間30日以上と示されているように、この地域は[[落雷]]頻度が周囲より高く、高高度アンテナのためより雷害を受けやすい。実証試験も行いつつ対策を強化して[[避雷器|雷保護ヒューズ]]を導入するが、導入後も[[発振回路|発振器]]を構成するローディングコイルの交換を要する雷害が発生している。後にコイル舎を増設して2つ置くようになったが、北九州デッカチェーンの研究を行った加島篤によると、交換には時間を要し冬の道路輸送にも難があることから二重にしたと考えられる{{R|加島}}。 |
|||
ところが、やがて[[GPS]]、特に[[ディファレンシャルGPS]]の普及などはデッカ航法の代替を可能にし、廃止が検討されるようになった{{R|町史|加島}}。海上保安庁の国内6チェーンのうち4つは1993年に廃止されたが、利用者が比較的多かった北九州と北海道の2つは数年後まで存続し、前原デッカ局を含む北九州デッカチェーンは[[1999年]](平成11年)3月10日に廃止となる。[[響灘]]・[[玄界灘]]での五智網(ごちあみ)漁はデッカ航法との相性が良く、漁業者は廃止に反対したという{{R|加島}}。 |
|||
その跡地には[[はがね山標準電波送信所]]が建設され、前原デッカ局廃止から2年後の[[2001年]](平成13年)4月1日には運用開始となる。加島によると、標高が高くかつ開けた土地がある点、道路や電線・電話回線が整備されている点、デッカ運用の際に得られた[[電波伝搬]]特性のデータが活用できる点の3つでデッカ局所在地はJJY送信所にも適しており、[[おおたかどや山標準電波送信所]]も[[大鷹鳥谷山]](福島県)の東北デッカチェーンの従局跡地に設けられている{{R|加島}}。 |
|||
== 出典 == |
== 出典 == |
||
{{Reflist}} |
|||
<references /> |
|||
{{mountain-stub|pref=福岡県|pref2=佐賀県}} |
{{mountain-stub|pref=福岡県|pref2=佐賀県}} |
2024年3月17日 (日) 09:32時点における版
羽金山 | |
---|---|
佐賀市富士町大字上無津呂から | |
標高 | 900.23 m |
所在地 |
日本 佐賀県佐賀市 |
位置 | 北緯33度27分55.4秒 東経130度10分32.6秒 / 北緯33.465389度 東経130.175722度座標: 北緯33度27分55.4秒 東経130度10分32.6秒 / 北緯33.465389度 東経130.175722度 |
山系 | 脊振山系 |
種類 | 山塊 |
プロジェクト 山 |
羽金山(はがねやま)は、福岡県糸島市と佐賀県佐賀市との境界にある、脊振山地に属する山である。山頂及び三角点は、両県の県境から約70メートルの佐賀県佐賀市側にある。山頂のはがね山標準電波送信所も同じく佐賀県側にある。
概況
糸島(前原)市街から山頂へは、白糸の滝を通り続く林道を経て、分岐し送信所へ至る専用道路が整備されている。これは前原デッカ局時代に海上保安庁専用道路として造られたもので、「デッカ橋」と命名された橋もある。専用道路入口にはゲートがあり、一般車両は入ることができない[1][2]。
専用道路を少し進むと脇に逸れる登山道があり、東西に脊振山地の稜線を繋ぐ縦走路に合流する。山域にはツクシショウジョウバカマの群生地がみられる[2]。
山頂一帯ははがね山標準電波送信所の敷地である。糸島市観光協会などもウェブページで紹介しているが、入口で許可を得られれば、徒歩で敷地内に入ることができる。ただし、工事期間を除いた平日昼間に限られ、人数制限や食事禁止など、敷地内での行動は指示に従う必要がある[2][3]。
三角点
山頂に二等三角点がある。基準点名は、「羽金山」ではなく、「刃金山」である[4]。位置は北緯33度27分55.4723秒、東経130度10分32.6153秒、標高は900.23メートル、住所は佐賀県佐賀市富士町大字上無津呂字中敷4017番地。柱石長は0.79メートル。三角点への道のりは、点の記で知ることができる[5][6]。
送信所
羽金山山頂には昭和後期から平成初期までデッカ航法のための送信所が設けられていた。海上保安庁が管理し高さ153メートルの送信アンテナを有していた「前原デッカ局」で、1969年(昭和44年)5月1日に運用開始、星形に配置された対馬の上県(長崎県)、長島(鹿児島県)、佐多岬半島の瀬戸(愛媛県)の3か所の従局を有する北九州デッカチェーンの主局であった[7][1]。
建設地選定では、初め福岡県の鷹取山、福智山、三郡山などに調査が及んだが適地である平坦な山頂を見つけられず、羽金山が選定されることとなった。なお、工事を担当した第七管区の江並脩の手記には悪路や天候不順との闘いが記されている[1]。
また、1954-1963年の観測から気象庁が作成した年間雷雨日数分布図で雷雨日数が年間30日以上と示されているように、この地域は落雷頻度が周囲より高く、高高度アンテナのためより雷害を受けやすい。実証試験も行いつつ対策を強化して雷保護ヒューズを導入するが、導入後も発振器を構成するローディングコイルの交換を要する雷害が発生している。後にコイル舎を増設して2つ置くようになったが、北九州デッカチェーンの研究を行った加島篤によると、交換には時間を要し冬の道路輸送にも難があることから二重にしたと考えられる[1]。
ところが、やがてGPS、特にディファレンシャルGPSの普及などはデッカ航法の代替を可能にし、廃止が検討されるようになった[7][1]。海上保安庁の国内6チェーンのうち4つは1993年に廃止されたが、利用者が比較的多かった北九州と北海道の2つは数年後まで存続し、前原デッカ局を含む北九州デッカチェーンは1999年(平成11年)3月10日に廃止となる。響灘・玄界灘での五智網(ごちあみ)漁はデッカ航法との相性が良く、漁業者は廃止に反対したという[1]。
その跡地にははがね山標準電波送信所が建設され、前原デッカ局廃止から2年後の2001年(平成13年)4月1日には運用開始となる。加島によると、標高が高くかつ開けた土地がある点、道路や電線・電話回線が整備されている点、デッカ運用の際に得られた電波伝搬特性のデータが活用できる点の3つでデッカ局所在地はJJY送信所にも適しており、おおたかどや山標準電波送信所も大鷹鳥谷山(福島県)の東北デッカチェーンの従局跡地に設けられている[1]。
出典
- ^ a b c d e f g 加島篤「北九州デッカチェーンをめぐる無線技術史―中距離航行用長波電波標識の建設と運用―」『北九州工業高等専門学校研究報告』第53号、2020年1月31日、21-40頁、NCID AA12510939。
- ^ a b c 池田浩伸 (2023年3月20日). “ツクシショウジョウバカマの群生地を訪ね、福岡・佐賀県境の羽金山へ”. 山と渓谷オンライン. 山と渓谷社. 2024年3月17日閲覧。
- ^ “羽金山山頂へ行かれる登山者へ”. 糸島観光サイト つなぐいとしま. 糸島市観光協会 (2023年3月20日). 2024年3月17日閲覧。
- ^ 基準点成果情報 国土地理院
- ^ 点の記 国土地理院
- ^ [1] Google Mapによる写真
- ^ a b 富士町史編さん委員会 編『富士町史 上巻』富士町史、2000年3月31日。全国書誌番号:20068539NDLJP:11517130。