「アナザー・マインド」の版間の差分
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2012年10月1日 (月) 14:03時点における版
ジャンル | ダイアローグ・アドベンチャー |
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対応機種 | プレイステーション |
開発元 | スクウェア |
発売元 | スクウェア |
人数 | 1人 |
メディア | CD-ROM1枚 |
発売日 | 1998年11月12日 |
その他 | 撮影協力:IMAGICA |
『アナザー・マインド』 (Another Mind) は、1998年11月12日にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売されたプレイステーション用ゲームソフト。
概要
他人の意識の中に入り込んでしまった記憶喪失の男性・真野と、彼の「宿主」となった少女・瞳が、さまざまなトラブルに襲われつつもそれらを協力して切り抜け、事態の真相を探るというアドベンチャーゲーム。全9章で、プレイ時間はおよそ5~10時間。全体としては一本道の流れだが、ゲームオーバーも含め、章内部には数多くの分岐が存在する。
作中では一貫して、上記の真野のことを「プレイヤー」、瞳のことを「主人公」と呼んでいる。これは本作が、通常とは違った「プレイヤー≠主人公」というスタイルのゲームであることを示す。プレイヤー=真野は肉体を持たず、主人公=瞳の精神に間借りしている存在にすぎない。それゆえ、プレイヤーがあることをしたいと思っても、まずはそれを瞳に伝えなければならない(対話方法については#システムで詳説する)。瞳も自分の意思を持った存在であるため、常にプレイヤーの考えが通るとは限らない。
さらに、ゲーム中には「信頼度」「好感度」「おちゃめ度」なる隠しパラメータが存在し、これらはプレイヤーの瞳に対する反応によって変動していく。すなわち、瞳に適切なアドバイスをすれば「信頼度」が、親身になって接すれば「好感度」が、ふざけた対応をすれば「おちゃめ度」が上昇するのである(逆もまたしかり)。そして、これらのパラメータによって、同じ局面でも瞳の態度が変わってくることが少なくない。例えば「信頼度」が低ければ、たとえプレイヤーが現在直面している問題の解決策を思い至っても、瞳に話すら聞いてもらえないということもある。
本作は実写作品であり、伊藤かずえ、筧利夫、高知東生、山下真司といった俳優陣が出演している。しかし、作品のボリューム自体が比較的小さめであること、俳優が直接画面に登場するのは全画面のムービーをはじめとする重要なシーンのみで、その他の場面では背景写真上のフェイスウィンドウ内にループムービーが流れるという形をとっている。それでもクランクインからクランクアップまでは3週間掛かり、その間朝7時から夜10時まで隙間なく撮影が行われたという。
公式サイト上で自ら指摘していたように、『アナザー・マインド』は、当時のスクウェアにとって異色の作品であった。まず、質の高いCGで知られる同社が、あえて実写を採用したこと。次に、ファイナルファンタジーシリーズの成功により大作RPGのメーカーと認識されて久しい同社が、既に主要ジャンルとは呼べなくなっていたアドベンチャーゲームを作ったことである。
システム
ダイアローグシステム
このゲームは基本的に、瞳と他の登場人物の会話によって進行する。これにはプレイヤーは一切介入できない。しかし、瞳とプレイヤーは精神を共有しているため、心の中で対話をすることが可能。この対話イベントが発生すると、画面上に表示されている脳の形をかたどった「ニューロリンクインジケーター」が緑色に点灯する。対話イベント中は、単純に用意された選択肢を選ぶのではなく、下記のプロセスに沿ってプレイヤー自らが文を作ることで、コミュニケーションを行うのである(これは説明のために創作した、作中には存在しない文である)。
- 述語を選ぶ
- 選択肢「見る」「調べる」「使う」から「調べる」を選ぶ
- ここまでの文は「調べる」
- 述語の活用形を選ぶ
- 選択肢「調べる」「調べろ」「調べるか?」「調べない」から「調べるか?」を選ぶ
- ここまでの文は「調べるか?」
- 主語を選ぶ
- 選択肢「君は」「僕は」から「君は」を選ぶ
- ここまでの文は「君は 調べるか?」
- 修飾語を選ぶ
- 選択肢「テレビを」「パソコンを」「電話機を」から「テレビを」を選ぶ
- 「君はテレビを調べるか?」という文が完成する
このようにして作られた文に対して瞳が反応を返し、プレイヤーがさらに文を作ってそれに応じるというやりとりが対話の終了まで繰り返されることになる。ただし,ゲーム中では4つのプロセスのうちいくつかが省略されることが多い。また、状況によっては文の作成に制限時間が設けられることもある。
つっこみシステム
画面上のインジケーターが緑色のときは、強制的に対話が開始される。ただしインジケーターがオレンジ色のときは、対話を行うか否かはプレイヤーに委ねられている。×ボタンを押せば対話が開始され、○ボタンで文章を送ればそのまま物語が進行する。対話を行うかどうかによって後の展開が異なってくることがある。これは、ジャケット裏にも掲げられている正式なシステム名である。
登場人物
- 真野俊平(デフォルト名)
- 「プレイヤー」。冒頭で名前を入力する(本名の入力が推奨されている)。記憶を失って瞳の意識内で目覚めた男性。プレイヤーの作る対話文以外、彼が自ら言葉を口にすることはない。そのため、彼の性格・知識・趣味などはみなプレイヤーに委ねられている。
- 葉山瞳(デフォルト名) - 松下恵
- 「主人公」。同じく冒頭で名前を入力する。16歳、高校2年生。意識の中に真野が入り込んだことから、予知能力めいた力を手に入れ、さらに様々な事件に巻き込まれていく。天然ボケ気味のおっとりした少女だが、いざというときの行動力と判断力は確か。
- 高木真理子(たかぎ まりこ) - 横山夏海
- 瞳の親友。16歳、高校2年生。瞳とは対照的に活発な性格で、少々引っ込み思案な瞳を真理子が引っ張る形。休日にはよく二人で映画鑑賞やショッピングに出かけている。ただし、怖いものは大の苦手。明円のことを、口では悪く言いつつも気にしている様子。
- 鳴海健一(なるみ けんいち) - 山下真司
- ベテラン刑事。42歳。部下の猿渡からは「ルミさん」と呼ばれる。多分に不器用な性格で、瞳に対して厳しい言葉を口にすることもあるが、それも彼女のことを思えばこそである。ある殺人事件に疑問を感じ、担当から外されながらも執念深く追いつづけている。
- 猿渡純(さるわたり じゅん) - 松永博史
- 若手刑事。25歳。上司の鳴海からは「サル」と呼ばれる。鳴海とコンビを組んで行動し、彼同様に瞳のことを気遣ってくれる。クールな外見とは裏腹に、内側に熱いものを秘めた青年。一方で、憧れの夏子に対してはしまりのない笑顔を見せるという面もある。
- 明円輝夫(みょうえん てるお) - 高知東生
- フリーのルポライター。30歳。事件に対する嗅覚は人一倍であり、その表面上非常に軽い性格も相俟って、鳴海や猿渡からは胡散臭そうな目で見られている。とはいえ瞳にとっては、刑事たちと同じ心強い味方の一人。精神的にも成熟した女性が好みという。
- 向井夏子(むかい なつこ) - 伊藤かずえ
- サイコセラピスト。28歳。知的で優しげな雰囲気の持ち主。自身の診療所「ムカイ・カウンセリング」を訪れた瞳に対してカウンセリングを行う。催眠術によって真野を意識の表層に呼び出し、様々な質問をすることで、その正体を見極めようとする。
- 渡瀬鈴(わたせ りん) - 菊池万理江
- テレパシー能力を持つ少女。20歳。ある夜、瞳の意識の中に入り込んでくる。天真爛漫な性格であり、初対面の真野に対していきなり積極的なアプローチを開始し、瞳を辟易させる。真野と瞳の現象を「アナザー・マインド」と呼び、何かを知っている様子である。
- 渡瀬玲( - れい) - 菊池万理江(鈴と二役)
- 鈴の双子の姉。20歳。フラワーショップ「IRIS」で働くしとやかな女性。外見こそ鈴と瓜二つだが性格は正反対で、彼女の「暴走」に頭を悩ませる毎日。現在の恋人を巡って以前鈴とトラブルになっており、そのことが今でも二人の間にしこりとなって残っている。
- 桐原育夫(きりはら いくお) - 筧利夫
- 医学博士。35歳。「精神医療開発センター」で人間の脳と意識に関する研究を行っており、T大学付属病院との共同プロジェクト「アナザー・マインド・プロジェクト」のリーダーを務める。鈴・玲姉妹の父親代わりであり、鈴のテレパシー能力とも関わりがある。
- 砂原巧(さはら たくみ) - 吹越満(友情出演)
- 第5章に登場。作家。32歳。ある屋敷に家庭教師として雇われつつ、屋敷内の仕事部屋で小説を執筆する。白猫「雪風」を飼う。
- 阿久津安弘役(あくつ やすひろ) - 吉満涼太
ストーリー
交通事故に遭って入院した瞳は、自分の中に真野と名乗る男の意識が存在することに気付く。だが彼は名前以外のほとんどの記憶を失っていた。やがて退院の日を迎えた瞳は、高校生として普段どおりの生活を送りつつ、「同居人」である真野の正体を探る試みを続ける。しかしその後、瞳は立て続けに奇妙な出来事に巻き込まれる。学園祭中止を要求する脅迫状、鄙びた温泉地で企まれる殺人計画、コンサート会場への爆弾テロ、果ては奇妙な屋敷で過ごす夢の世界まで……。その度に瞳は、解決の手掛かりとなる「ビジョン」を幻視する。彼女は「ビジョン」の力に加え、真野や仲間たちの助けも得て、事件を解き明かしていくのだった。
やがて瞳は、双子の姉妹・玲と鈴に出会う。鈴は、他人の意識の中に入り込むことができる特異な力を持っていた。玲と鈴はかつて水難事故に遭って両親を失い、玲は助かったものの、鈴は一時意識不明の重体となっていた。その治療の過程で、桐原なる研究者が開発した手法により、鈴の意識のみが玲に移され、以来鈴はテレパシー能力を得たのだという。鈴は、桐原が瞳に会いたがっていると告げる。桐原は、真野について何かを知っているのだろうか? そして鈴が口にした「アナザー・マインド」なる言葉に秘められた謎とは……?
その他
- ジャケット裏にはゲーム冒頭の展開が紹介されている。そこでは瞳が真野に対し、自分の中から出て行くよう叫んでいるが、本編ではそのような激したやりとりにはならない。瞳は最初こそ驚くものの、真野の存在を比較的冷静に受け入れる。
- プレイヤーまたは主人公の名前入力の際、姓名に他の登場人物と全く同じ漢字を使用すると、その登場人物には読みが同じ別の漢字が当てられる。たとえばプレイヤーの名前を「鳴海健一」にすると、本来の鳴海は「成見賢一」(読みは「なるみ けんいち」のまま)となる。テキストだけでなく、画像上に直接名前が登場する場合、それも別の画像に置き換えられるという凝りようである。これは主要人物に限らず、一度だけしか登場しない脇役などゲーム中に登場する全ての人物に適用される。姓だけ、または名だけを同じにした場合、対象の人物はその部分だけが変更される。
- 図書館で閲覧できる新聞の一部には、『ファイナルファンタジーVII』『ファイナルファンタジータクティクス』『ファイナルファンタジーVIII』を題材にした4コマ漫画が載っている。ゲーム中だとかなり見づらいが、攻略本(#参考文献参照)に原画が収録されている。
- 第2章の作中時間は4月だが、登場する高校生たちは夏服を着ているという、設定上不都合のある演出が見られる。なお、この章の撮影は夏休みを利用して行われた。
- 制作当初は、現在の第5章と第6章の間に「閃光のハイウェイ」なるエピソードが入る予定だった。真理子とともに明円の車でドライブに出かけた瞳が、高速道路で発生する事故を予知してしまう。これをどうやって回避するか、あるいは事故そのものを防ぐのか――という内容である。しかし、高速道路を使用した撮影の許可が得にくいことが判明し、お蔵入りになってしまったという。なお本編中には、この「幻の第6章」への伏線となる描写が残っている。
- 若手刑事の「猿渡」、悪役の「阿久津」といった姓は、堀井雄二がシナリオを担当したアドベンチャーゲーム『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』へのオマージュと考えられる。
- 同じく1998年に発売された実写アドベンチャーゲーム同士というつながりで、公式サイト上には『街』で製作総指揮を手掛けたチュンソフトの中村光一と、本作のディレクター小久保啓三のメールによる対談が掲載されていた。
- 同年発売のPS用ソフト『チョコボの不思議なダンジョン2』に付属していたおまけディスク「不思議なデータディスク2」において、映像特典として葉山瞳を演じる松下恵のスペシャルインタビューが収録されていた。
参考文献
- 『アナザー・マインド ダイアローグ攻略本』 デジキューブ、1998年 ISBN 4-925075-33-0