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== 来歴 ==
== 来歴 ==
=== 生い立ち ===
=== 生い立ち ===
1948年に愛媛県松山市平井の母親の実家にて誕生。父の[[野地潤家]]は、広島大学の教員であったので、広島市にて18才まで住む。父は言語の発達のメカニズムに興味を持ち、澄晴の言葉の発達について、0才から5才まで記録した。当時は録音装置などないため、カードに筆記する方法で記録。話す速度が増すと、速記法を勉強して記録した。その記録は『幼児期の言語生活の実態』全4巻として発表されている。米国においては「Sumihare Data base」として保存されている。父の関係で広島大学附属小学校に入学、附属中学校、附属高等学校に進学した。高校1年生の時に生徒会長になっている。「時間とは何か?」に疑問を持っていた時に、図書館で借りたアインシュタインの特殊相対性理論の解説書において、物体飛ぶ速度に応じて時間の進み方が変化することを知り、物理学に興味を持った。
1948年に愛媛県松山市平井の母親の実家にて誕生<ref name=":0">{{Cite book|title=幼児期の言語生活の実態|url=https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001256360-00|publisher=文化評論出版|date=1974|location=東京|first=野地|last=潤家}}</ref>。父の[[野地潤家]]は、広島大学の教員であったので、広島市にて18才まで住む。父は言語の発達のメカニズムに興味を持ち、澄晴の言葉の発達について、0才から5才まで記録した。当時は録音装置などないため、カードに筆記する方法で記録。話す速度が増すと、速記法を勉強して記録した。その記録は『幼児期の言語生活の実態』全4巻<ref name=":0" />として発表されている。米国においては「Sumihare Data base」として保存されている。父の関係で広島大学附属小学校に入学、附属中学校、附属高等学校に進学した。高校1年生の時に生徒会長になっている。「時間とは何か?」に疑問を持っていた時に、図書館で借りたアインシュタインの特殊相対性理論の解説書において、「光の速度に近い速さで動くものは、時間が間延びし遅く流れる」ことを知り、時間の進み方が変化することに衝撃受け、物理学に興味を持った。


澄晴は、福井大学工学部で応用物理学を専攻し、卒論は「量子統計学の拡張」であった。在学中、理論物理学者であるシュレディンガー博士の著書「生命とは何か」等に影響を受け、生物を研究対象に選んだ。特に「部屋を飛んでいるハエが、なぜ飛べるのか?」に疑問を持ち、工学的には非常に高度な制御をしており、それを機械と見ると、決して今の技術では作製できない」と考え、これからの工学は生物に学ぶべきであると考え、生物への転向を決意した。
澄晴は、福井大学工学部で応用物理学を専攻し、卒論は「量子統計学の拡張」であった。在学中、理論物理学者であるシュレディンガー博士の著書「生命とは何か」等に影響を受け、生物を研究対象に選んだ。特に「部屋を飛んでいるハエが、なぜ飛べるのか?」に疑問を持ち、工学的には非常に高度な制御をしており、それを機械として見ると、決して今の技術では作製できない」と考え、これからの工学は生物に学ぶべきであると、生物への転向を決意した<ref>{{Cite book|title=形つくりの分子メカニズム|date=1993年9月1日|year=1993|publisher=羊土社}}</ref>


=== 研究歴 ===
=== 研究歴 ===
広島大学大学院理学研究科物性学専攻では、DNAなどの生体高分子の物性研究を電子スピン共鳴法(ESR)により行い理学博士を取得した。その後、1980年に米国に留学し、米国衛生研究所(NIH)のNIDDKの物理化学研究室の昆 博士の研究室の博士研究員となり、ヒト赤血球の変形能をESRを用いて研究した。当時NIHで発展していた分子生物学に感動し、帰国後岡山大学歯学部にて、当時まだ汎用されていなかった分子生物学的方法を独自に立ち上げ、医歯薬学の研究者と共同研究を行い、特に四肢の発生の研究を行った(1982〜1992年)。四肢形成のメカニズムを解明し、Nature誌とCell誌に論文を発表した。
広島大学大学院理学研究科物性学専攻では、DNAなどの生体高分子の物性研究を電子スピン共鳴法(ESR)により行い理学博士を取得した。その後、1980年に米国に留学し、米国衛生研究所(NIH)のNIDDKの物理化学研究室の昆 博士の研究室の博士研究員となり、ヒト赤血球の変形能をESRを用いて研究した。当時NIHで発展していた分子生物学に感動し、帰国後岡山大学歯学部にて、当時まだ汎用されていなかった分子生物学的方法を独自に立ち上げ、医歯薬学の研究者と共同研究を行い、特に四肢の発生の研究を行った(1982〜1992年)。四肢形成のメカニズムを解明し、Nature誌とCell誌に論文を発表した<ref>{{Cite journal|author=Noji S, Nohno T, Koyama E, Muto K, Ohyama K, Aoki Y, Tamura K, Ohsugi K, Ide H, Taniguchi S, et al.|year=1991|title=Retinoic acid induces polarizing activity but is unlikely to be a morphogen in the chick limb bud.|journal=Nature|volume=350(6313)|page=83-86}}</ref><ref>{{Cite journal|author=Nohno T, Noji S, Koyama E, Ohyama K, Myokai F, Kuroiwa A, Saito T, Taniguchi S.|year=1991|title=60. Involvement of the Chox-4 chicken homeobox genes in determination of anteroposterior axial polarity during limb development.|journal=Cell|volume=64(6)|page=1197-1205}}</ref>


1992年に徳島大学工学部に教授として赴任後(1993年以降)、四肢のZPA(極性化活性域)を誘導する因子はFGF(線維芽細胞増殖因子)であると予想して研究を行った。しかし、the Department of Genetics at Harvard Medical SchoolのClifford Tabinらによって、それはShh( Sonic hedgehog)であることが発見された。一方、野地研究室においては、FGFは肢芽を誘導する因子であることを、三川研究室のラボで大内淑代らが発見した<ref>{{Cite journal|author=Mima T, Ohuchi H, Noji S, Mikawa T.|year=1995|title=FGF can induce outgrowth of somatic mesoderm both inside and outside of limb-forming regions.|journal=Dev Biol.|volume=167(2)|page=617-620}}</ref>。最終的に、肢芽誘導因子はFGF10であることを発見した<ref>{{Cite journal|author=Ohuchi H, Nakagawa T, Yamamoto A, Araga A, Ohata T, Ishimaru Y, Yoshioka H, Kuwana T, Nohno T, Yamasaki M, Itoh N, Noji S.|year=1997|title=37. The mesenchymal factor, FGF10, initiates and maintains the outgrowth of the chick limb bud through interaction with FGF8, an apical ectodermal factor.|journal=Development.|volume=124(11)|page=2235-2244}}</ref>。この因子を用いると、ニワトリ胚において、翼と脚の間に新規の肢が形成される。この過剰な肢を、「蛇足」と名付けた。
1992年に徳島大学工学部に教授として赴任後(1993年以降)、脊椎動物の四肢の発生の研究に加えて、形態進化のメカニズムを昆虫の擬態に着目して研究するため、コオロギを新規なモデル動物として開発し、その発生・再生・進化のメカニズムとその応用について研究した。

脊椎動物の四肢の発生の研究に加えて、形態進化のメカニズムを昆虫の擬態に着目して研究するため、コオロギを新規なモデル動物として開発し、その発生・再生・進化のメカニズムとその応用について研究した<ref>{{Cite book|title=新形づくりの分子メカニズム|date=1999年7月15日|year=1999|publisher=羊土社}}</ref>。特に、コオロギの脚の再生に着目し、脚の再生に関する新しいモデルを提案した<ref>{{Cite journal|author=Bando T, Mito T, Maeda Y, Nakamura T, Ito F, Watanabe T, Ohuchi H, Noji S.|year=2009|title=Regulation of leg size and shape by the Dachsous/Fat signalling pathway during regeneration.|journal=Development. 2009|volume=136(13)|page=2235-2245}}</ref>。


==== 大学の運営歴 ====
==== 大学の運営歴 ====
2011年に、徳島大学の図書館長に就任。2012年に香川 征学長の元で、理事・副学長(研究担当)に就任。2016年から第13代徳島大学長に就任。
2011年に、徳島大学の図書館長に就任。2012年に香川 征学長の元で、理事・副学長(研究担当)に就任。2016年から第13代徳島大学長に就任<ref>{{Cite web|title=国立大学法人 徳島大学|url=https://www.tokushima-u.ac.jp/|website=www.tokushima-u.ac.jp|accessdate=2019-07-12}}</ref>


== 経歴 ==
== 経歴 ==

2019年7月12日 (金) 16:56時点における版

野地 澄晴(のじ すみはれ、1948年3月9日 - )は、理学博士。日本生物工学者徳島大学学長。愛媛県出身。

来歴

生い立ち

1948年に愛媛県松山市平井の母親の実家にて誕生[1]。父の野地潤家は、広島大学の教員であったので、広島市にて18才まで住む。父は言語の発達のメカニズムに興味を持ち、澄晴の言葉の発達について、0才から5才まで記録した。当時は録音装置などないため、カードに筆記する方法で記録。話す速度が増すと、速記法を勉強して記録した。その記録は『幼児期の言語生活の実態』全4巻[1]として発表されている。米国においては「Sumihare Data base」として保存されている。父の関係で広島大学附属小学校に入学、附属中学校、附属高等学校に進学した。高校1年生の時に生徒会長になっている。「時間とは何か?」に疑問を持っていた時に、図書館で借りたアインシュタインの特殊相対性理論の解説書において、「光の速度に近い速さで動くものは、時間が間延びして遅く流れる」ことを知り、時間の進み方が変化することに衝撃を受け、物理学に興味を持った。

澄晴は、福井大学工学部で応用物理学を専攻し、卒論は「量子統計学の拡張」であった。在学中、理論物理学者であるシュレディンガー博士の著書「生命とは何か」等に影響を受け、生物を研究対象に選んだ。特に「部屋を飛んでいるハエが、なぜ飛べるのか?」に疑問を持ち、工学的には非常に高度な制御をしており、それを機械として見ると、決して今の技術では作製できない」と考え、これからの工学は生物に学ぶべきであると、生物への転向を決意した[2]

研究歴

広島大学大学院理学研究科物性学専攻では、DNAなどの生体高分子の物性研究を電子スピン共鳴法(ESR)により行い理学博士を取得した。その後、1980年に米国に留学し、米国衛生研究所(NIH)のNIDDKの物理化学研究室の昆 博士の研究室の博士研究員となり、ヒト赤血球の変形能をESRを用いて研究した。当時NIHで発展していた分子生物学に感動し、帰国後岡山大学歯学部にて、当時まだ汎用されていなかった分子生物学的方法を独自に立ち上げ、医歯薬学の研究者と共同研究を行い、特に四肢の発生の研究を行った(1982〜1992年)。四肢形成のメカニズムを解明し、Nature誌とCell誌に論文を発表した[3][4]

1992年に徳島大学工学部に教授として赴任後(1993年以降)、四肢のZPA(極性化活性域)を誘導する因子はFGF(線維芽細胞増殖因子)であると予想して研究を行った。しかし、the Department of Genetics at Harvard Medical SchoolのClifford Tabinらによって、それはShh( Sonic hedgehog)であることが発見された。一方、野地研究室においては、FGFは肢芽を誘導する因子であることを、三川研究室のラボで大内淑代らが発見した[5]。最終的に、肢芽誘導因子はFGF10であることを発見した[6]。この因子を用いると、ニワトリ胚において、翼と脚の間に新規の肢が形成される。この過剰な肢を、「蛇足」と名付けた。

脊椎動物の四肢の発生の研究に加えて、形態進化のメカニズムを昆虫の擬態に着目して研究するため、コオロギを新規なモデル動物として開発し、その発生・再生・進化のメカニズムとその応用について研究した[7]。特に、コオロギの脚の再生に着目し、脚の再生に関する新しいモデルを提案した[8]

大学の運営歴

2011年に、徳島大学の図書館長に就任。2012年に香川 征学長の元で、理事・副学長(研究担当)に就任。2016年から第13代徳島大学長に就任[9]

経歴

所属学会

著書

  • 『理系のアナタが知っておきたいラボ生活の中身〜バイオ系の歩き方』(2012年4月、羊土社)
  • 『免疫染色 & in situハイブリダイゼーション最新プロトコール―抗体・プローブの作製から手法の選択,顕微鏡観察まで実践テクニックが余さずわかる! (注目のバイオ実験シリーズ) 』(2006年9月、羊土社)

脚注

  1. ^ a b 潤家, 野地 (1974). 幼児期の言語生活の実態. 東京: 文化評論出版. https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001256360-00 
  2. ^ 形つくりの分子メカニズム. 羊土社. (1993年9月1日) 
  3. ^ Noji S, Nohno T, Koyama E, Muto K, Ohyama K, Aoki Y, Tamura K, Ohsugi K, Ide H, Taniguchi S, et al. (1991). “Retinoic acid induces polarizing activity but is unlikely to be a morphogen in the chick limb bud.”. Nature 350(6313): 83-86. 
  4. ^ Nohno T, Noji S, Koyama E, Ohyama K, Myokai F, Kuroiwa A, Saito T, Taniguchi S. (1991). “60. Involvement of the Chox-4 chicken homeobox genes in determination of anteroposterior axial polarity during limb development.”. Cell 64(6): 1197-1205. 
  5. ^ Mima T, Ohuchi H, Noji S, Mikawa T. (1995). “FGF can induce outgrowth of somatic mesoderm both inside and outside of limb-forming regions.”. Dev Biol. 167(2): 617-620. 
  6. ^ Ohuchi H, Nakagawa T, Yamamoto A, Araga A, Ohata T, Ishimaru Y, Yoshioka H, Kuwana T, Nohno T, Yamasaki M, Itoh N, Noji S. (1997). “37. The mesenchymal factor, FGF10, initiates and maintains the outgrowth of the chick limb bud through interaction with FGF8, an apical ectodermal factor.”. Development. 124(11): 2235-2244. 
  7. ^ 新形づくりの分子メカニズム. 羊土社. (1999年7月15日) 
  8. ^ Bando T, Mito T, Maeda Y, Nakamura T, Ito F, Watanabe T, Ohuchi H, Noji S. (2009). “Regulation of leg size and shape by the Dachsous/Fat signalling pathway during regeneration.”. Development. 2009 136(13): 2235-2245. 
  9. ^ 国立大学法人 徳島大学”. www.tokushima-u.ac.jp. 2019年7月12日閲覧。

外部リンク

先代
香川征
第13代 徳島大学学長
2016年 -
次代
(現職)