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倒置

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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倒置(とうち)とは、言語において通常の語順を変更させることである。表現上の効果を狙ってなされる修辞技法の1つで、強調的修辞技法の一つである。

日本語における例

動詞の倒置法

日本語では動詞が最後に来る以外は語順が比較的自由なので、動詞を最後以外に持ってくることを倒置ということが多い。

例:

  • 困ったもんだね、君にも。

形容詞・形容動詞の倒置法

形容詞形容動詞の単語を倒置すると、意味が異なる場合があるが、この場合では倒置しても意味が異ならない。

例:

  • 赤いにおいがする花(←赤いにおいは存在しないので、赤いのは花)⇔においがする赤い花
  • すごいですね、なかなか。

例外

ただし、この場合は形容詞形容動詞の単語を倒置すると、意味が異なるので、例外である。

  • 青いとりかごの中の鳥(←青いのはとりかご)⇔とりかごの中の青い鳥(←青いのは鳥)
  • きれいな眼鏡をかけた女性(←きれいなのは眼鏡)⇔眼鏡をかけたきれいな女性(←きれいなのは女性)

主語の倒置法

  • あなたが東京に住んでるということを、私は知っている。

関連する修辞技法

倒置法は代表的な強調的修辞技法であり、語感や文章表現を強調することから強調的修辞技法という。これらは倒置法の他に、誇張法、設疑法、反語法、感嘆法、反復法がある。

「はらわたが煮えくり返る(ほど怒る)」、「死ぬ(死にそうな)ほど疲れる」、などがそれに当たり、一種の比喩表現(直喩またはメタファー)でもある。

  • 設疑法

筆者が自分の回答を疑問文形式で投げかけ、読者が自発的に分かるように仕掛けた修辞表現。

筆者が選択、判断を強調し、求められた反対の回答を強調するために用いる修辞技法。「…のようなことがあろうか、(それはない)。」という用法で用いられるのが一般的。たいてい、回答の部分は削除される。

例:健康でいられること、これ以上の幸せがあろうか。(それ以上のものはない)
 :彼がそんなことをする人間だと思えるか?(それは考えられない)

  • 感嘆法

冒頭に感嘆詞を用いて、作中の主人公、相手の感情、情景を強調する方法。 例:ああ、なんて僕はついてないんだ。
 :いやはや、君がこれほどの器だとは。

  • 反復法

文面の接頭に類似した表現を繰り返し、作中の人物の心情や状況を強調する表現。

例:辛い、切ない、悲しい、そんな感情が自分を苦しめる。

英語における例

疑問文

疑問文では一般に、主語と動詞(助動詞)の位置が入れ替わる。

  • Can you play the piano? (ピアノは弾けますか?)
  • Where are you from? (あなたはどちらの出身ですか?)

感嘆文

強調される対象の後に主語と動詞が来る。主語と動詞が入れ替わることもある。

  • What a beautiful voice she has! (彼女は何て美しい声を持っているんだろう。)
  • How hot it is! (何て熱いんだろう。)

副詞で始まる文

副詞が文頭に来た場合には、副詞-動詞-主語 の語順に変化する。特に次のような文例では倒置語順を用いるのが普通である。

  • There is a pen in this box. (この箱の中にペンがある。)

疑問文ではbe動詞とthereの位置が入れ替わるように、このthereは主語のような働きをしているが、実際の主語はa pen。

  • A: I'm not good at mathematics.
    B: Neither am I.
    (A「私は数学が苦手なんです」 B「僕もだよ」)
  • Hardly had he seen me when he ran away.(彼が私を見た途端に、逃げ出した。)

関連項目

  • ロシア的倒置法(倒置法ではなく、主語と目的語を逆転しただけのジョーク)