2024 年 71 巻 3 号 p. 153-166
目的 我が国において,身体活動・運動の促進に関する国家施策が複数の省庁で策定されている。本研究は市区町村における身体活動促進のための施策の策定とその実施状況について,行政部門別および自治体の人口規模別に検討することを目的とした。
方法 我が国のすべての市区町村を人口レベルで層化した上で,272市区町村を無作為に抽出し,これらの市区町村内にある6部門(保健,スポーツ,教育,都市計画,交通,環境)の1,632件を対象にした。施策の策定状況,実施状況,および部門間の連携状況についてのアンケート調査を横断研究として実施した。自治体群間の差は,Fisherの正確確率検定を用いて統計解析した。なお,調査期間は2018年9月から2019年3月までであった。
結果 本調査の回答数は全体で616件(回答率37.7%)であり,保健部門と教育部門の回答率が他に比べて低かった。身体活動促進に関する施策の策定率は,保健部門とスポーツ部門においてきわめて高く,なおかつ自治体の人口規模による違いはほとんどみられなかった。一方,都市計画・交通・環境部門における策定率は全般的に低く,とくに小規模自治体で著しく低下した。身体活動促進に関する事業として,都市計画・交通・環境部門では主に運動・スポーツを実施するためのインフラの整備事業が,保健・スポーツ・教育部門ではそれらの環境を利用した事業が主に実施されていた。施策の実施時における部門間の連携については,保健部門とスポーツ部門と教育部門との間,および都市計画部門と交通部門との間のそれぞれに連携関係がみられた。しかしながら,小規模自治体ではこのような連携の機会は少なく,単独実施になりやすいことが明らかになった。
結論 本研究において,市区町村における身体活動促進に関する施策の策定および実施状況を全国レベルで把握することができた。さらに,複数の行政部門別および自治体の人口規模別に比較し,それぞれの特徴を明らかにすることができた。これらの成果が,今後の地方自治体における身体活動促進に関する施策の策定および実施に活用されることが期待される。