ミョウガ(茗荷 Zingiber mioga ROSCOE)の花序の水溶性画分(Z.mioga)の中枢神経作用を行動薬理学的および脳波学的に検討した.その結果,Z.miogaは50~400mg/kg,の腹腔内投与でマウスの自発運動量を著明に減少させた.しかしこの抑制作用のピークは投与30分後で,その後の自発運動は対照群よりもむしろ高い値を示した.さらにZ.miogaはマウスの直腸体温を著明に下降させ,thiopental睡眠を著しく延長させた.しかし,筋弛緩作用は軽度であり,抗けいれん作用は全く認められなかった.shuttle box法におけるラットの能動的条件回避反応はZ.mioga50~200mg/kg i.p.によって著明に抑制されたが,逃避行動は全く抑制されなかった.一方,step-down法における受動的条件回避反応はZ.mioga200mg/kg i.p.の投与によっても抑制されなかった.慢性電極を植込んだ無麻酔ウサギを用いてZ.miogaの脳波作用をchlorpromazineおよびdiazepamと比較検討した結果,Z.miogaは20~30mg/kgの静脈内投与によりウサギは行動上鎮静を示し,脳波は著明な傾眠パターンとなった.Z.miogaは音刺激による脳波覚醒反応を著明に抑制した.しかし,中脳網様体および後部視床下部の電気刺激による覚醒反応はZ.miogaによってほとんど影響を受けなかった.chlorpromazineもZ.miogaとほぼ同様の脳波作用を示した.大脳辺縁系後発射実験において,Z.miogaはchlorpromazineと同様に海馬および扁桃核刺激によるいずれの後発射をも増強させた.しかし,diazepamは逆に後発射を抑制した.Z.miogaは光誘起反応および漸増反応に対しほとんど影響を与えなかった.以上の結果よりZ.miogaは中枢神経系に対し抑制的に作用し,その作用態度はneurolcpticsのchlorpromazineに類似していることが示唆された.