コンテンツにスキップ

ネコノシタ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ネコノシタ
伊良湖岬の海岸に自生するネコノシタ(2014年8月30日)
ネコノシタ Wedelia prostrate
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : キク亜綱 Asteridae
: キク目 Asterales
: キク科 Asteraceae
亜科 : キク亜科 Asteroideae
: ハマグルマ属 Wedelia
: ネコノシタ W. prostrata
学名
Wedelia prostrata (Hook. et Arn.) Hemsl.
和名
ネコノシタ

ネコノシタ(猫の舌、学名Wedelia prostrata (Hook. et Arn.) Hemsl.)は、キク科ハマグルマ属分類される海岸に生育する多年草の1和名は、葉の形態がのようにざらついていることに由来する[1][2]。別名のハマグルマ(浜車)[注釈 1]は、花が車咲きである姿であることに由来する[4]。種小名の「prostrata」は、「平伏の」を意味する[5]

特徴

[編集]

は長く地をはい、からを深くおろし群落をつくる[4]。長い茎を分岐しながら伸ばして、節から根を出して増殖しいていく[2]対生し、長楕円形(長さ1.5-4.5 cm、幅4-14 mm)で、厚く[1]、かたい毛が生えていてネコの舌のようにざらつく。花期は7-10月[4]。茎の先端に直径16-22 mmの黄色の頭花を1個つける[1]。花は舌状花管状花から構成される頭状花序であり、舌状花は雄蘂が退化した雌花である[6]。管状花には両性花と雌花の二種類があり、雌花では雄蘂が短くも退化しており花粉を作らない[6]総苞は半球形で、片は卵形で短いかたい毛がある[1]そう果は長さ3.5-4 mm、幅2 mm[1]

分布・生育環境

[編集]
海岸 の砂浜(愛知県田原市伊良湖岬)でハマボウと混生するネコノシタ

ベトナム中国台湾朝鮮半島から日本にかけての暖帯から熱帯域に分布する[1]。同の中ではも最も北まで分布している種[7]

日本では本州関東および北陸地方以西)、四国九州小笠原諸島琉球諸島にかけて分布し、海岸の砂地に生育する[1][4]。波打ち際に近い砂浜で、コウボウムギハマボウなどと共に生育する[4]

種の保全状況評価

[編集]

日本では以下の都道府県で、レッドリストの指定を受けている[8]。自然の砂浜の開発[9][10][11][12]や護岸工事[7][13]、砂浜の波浪による浸食[14][15]、人による踏みつけ[14][10]などにより、多くの地域で減少傾向にあり絶滅が危惧されている。

近縁種

[編集]
キダチハマグルマ
木立浜車、学名:Wedelia biflora DC.、亜低木[2]
オオハマグルマ
大浜車、学名:Wedelia robusta (Makino) Kitam.、葉は薄く、頭花が3個つく[2]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 「ハマグルマ」は同属のクマノギク(Wedelia chinensis)の別名でもある[3]
  2. ^ 兵庫県のカテゴリー「Bランク」は、環境省の絶滅危惧II類相当。

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f g 北村 (1981)、175頁
  2. ^ a b c d 高村 (2005)、260頁
  3. ^ 牧野 (1974)、34頁
  4. ^ a b c d e 林 (2009)、84頁
  5. ^ 牧野 (1982)、571頁
  6. ^ a b 牧野 (1974)、32-34頁
  7. ^ a b c レッドデータブックあいち2009「ネコノシタ」” (PDF). 愛知県. pp. 592 (2009年). 2014年10月13日閲覧。
  8. ^ 日本のレッドデータ検索システム「ハマグルマ(ネコノシタ)」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2014年10月13日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
  9. ^ a b 茨城県レッドリスト(植物編2012改訂版)” (PDF). 茨城県. pp. 168 (2012年). 2014年10月13日閲覧。
  10. ^ a b c 福井県レッドデータブック(植物編)” (PDF). 福井県. pp. 112 (2004年). 2014年10月13日閲覧。
  11. ^ a b 岡山県版レッドデータブック2009” (PDF). 岡山県. pp. 217 (2009年). 2014年10月13日閲覧。
  12. ^ a b 徳島県版レッドデータブック” (PDF). 徳島県. pp. 321 (2001年). 2014年10月13日閲覧。
  13. ^ a b 愛媛県レッドデータブック「ネコノシタ」”. 愛媛県 (2003年). 2014年10月13日閲覧。
  14. ^ a b c レッドデータブックにいがた” (PDF). 新潟県. pp. 370 (2001年). 2014年10月13日閲覧。
  15. ^ a b レッドデータブックおおいた「ハアグルマ」”. 大分県 (2011年). 2014年10月13日閲覧。
  16. ^ 香川県レッドデータブック「ネコノシタ」”. 香川県 (2004年3月). 2014年10月13日閲覧。
  17. ^ 三重県レッドデータブック2005「ネコノシタ」”. 三重県 (2005年). 2014年10月13日閲覧。
  18. ^ 兵庫県版レッドデータブック2010「ネコノシタ」” (PDF). 兵庫県 (2010年). 2014年10月13日閲覧。

参考文献

[編集]
  • 高村忠彦(監修)『季節の野草・山草図鑑―色・大きさ・開花順で引ける』日本文芸社〈実用BEST BOOKS〉、2005年5月。ISBN 4537203676 
  • 佐竹義輔大井次三郎北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本Ⅲ合弁花類』平凡社、1981年10月。ISBN 4582535038 
  • 林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421 
  • 牧野富太郎、本田正次『原色牧野植物大図鑑北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZENCID BN00811290全国書誌番号:85032603https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001728467-00 
  • 牧野富太郎 著「ハマグルマ」、中村浩 編『牧野富太郎植物記6 海辺の花』あかね書房、1974年、32-35頁。 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]