ファラオ・サンダース
ファラオ・サンダース Pharoah Sanders | |
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ファラオ・サンダース(2006年) | |
基本情報 | |
出生名 | Farrell Sanders |
生誕 | 1940年10月13日(84歳) |
出身地 |
アメリカ合衆国 アーカンソー州リトル・ロック |
死没 | 2022年9月24日(81歳没) |
ジャンル |
フリー・ジャズ ワールド・ミュージック、アフロ、アヴァンギャルド・ジャズ |
職業 | サクソフォーン奏者 |
担当楽器 |
テナー・サックス フルート |
活動期間 | 1961年 - |
レーベル |
ESPディスク インパルス!レコード アリスタ・レコード テレサ・レコード タイムレス・レコード ヴァーヴ・レコード ヴィーナス・レコード |
共同作業者 |
サン・ラ ジョン・コルトレーン ドン・チェリー アリス・コルトレーン |
公式サイト | Pharoahsanders.net |
ファラオ・サンダース(Pharoah Sanders、1940年10月13日 - 2022年9月24日[1])は、アメリカ合衆国のジャズ・サクソフォーン奏者。アーカンソー州リトル・ロック出身。晩年のジョン・コルトレーンと活動を共にしており、彼の後継者として知られている。
経歴
[編集]クラリネットを始めた後に、テナー・サックスへと転向した。当初はブルースを演奏し、ボビー・ブランドがリトル・ロックを訪れた際、バックを務めた経験もある[2]。1959年、大学進学のためにカリフォルニア州オークランドへ移り、デューイ・レッドマンやフィリー・ジョー・ジョーンズらと共演後、1962年、拠点をニューヨークへと移す[3]。
サン・ラとの共演を経て、1964年、自身初のリーダー・アルバム『ファラオ』をESP-Diskレーベルから発表した。1965年にはジョン・コルトレーンのグループに加入する。コルトレーンにとって唯一の日本公演(1966年)にも帯同し、1967年にコルトレーンが他界してからはバンド・リーダーとしての活動が中心となる。
インパルス!レコードから発表した諸作では、ゴスペルやファンク、アフロビートなど幅広い黒人音楽をフリー・ジャズに取り込んだことで知られている。32分に及ぶ「The Creator Has A Master Plan」を収録した『カーマ』(1969年)は、『ブラック・ユニティ』(1971年)とならぶ彼の代表作のひとつである。なお、『ラヴ・イン・アス・オール』(1973年)では自らボーカルを披露している。インパルス!時代における彼のサイドマンとして、ロニー・リストン・スミスやセシル・マクビー、ロン・カーター、スタンリー・クラークなどが挙げられる。
1977年にアリスタ・レコードへ移籍してからは、コンテンポラリー路線にも手を染めるようになる。1987年にはオランダのジャズ・レーベル、タイムレス・レコードに移籍。ヴァーヴ・レコードから発表した『メッセージ・フロム・ホーム』(1996年)と『Save Our Children』(1998年)には、バーニー・ウォーレルやジャー・ウォブルが参加し、ビル・ラズウェルがプロデュースを担当している。日本のジャズ・レーベル、ヴィーナス・レコードが監修した『ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン』(2003年)には、同名曲の再演や、ホイットニー・ヒューストンのカバー「Greatest Love Of All」が収録されている。2004年には日本のバンドSLEEP WALKERと共演し、その時の音源は同バンドの『The Voyage』(2006年)に収録されている[4]。
自身のリーダー作においては、コルトレーンが作曲した楽曲(「ネイマ」「Welcome」)や、コルトレーンがレパートリーとした楽曲(「夜は千の目を持つ」)を頻繁に取り上げ、師としての彼に対する敬意を表している。
評価
[編集]アルバート・アイラーは、三位一体になぞらえて「トレーン(ジョン・コルトレーンの愛称)が父、ファラオが子、私が聖霊」と述べている[5]。さらに、オーネット・コールマンは「おそらく世界で最高のテナー・サックス奏者」と彼を評している[6]。近年は、日本のクラブ・シーンでも人気が高く、沖野修也(DJ、音楽プロデューサー)は「クラブ・ジャズ界における最重要レジェンド」と評している[7]。
ディスコグラフィ
[編集]リーダー作品
[編集]- 1960年代
- 『ファラオ』 - Pharoah(1964年録音)(ESP-Disk) 1965年
- 『神話(ターウィッド)』 - Tauhid(1966年11月録音)(Impulse!) 1967年
- 『イジフォ・ザム』 - Izipho Zam (My Gifts)(1969年1月録音)(Strata-East) 1973年
- 『カーマ』 - Karma(1969年2月録音)(Impulse!)1969年
- 『ジュエルズ・オブ・ソート』 - Jewels Of Thought(1969年10月録音)(Impulse!) 1969年
- 1970年代
- 『SUMMUM BUKMUM UMYUM』 - Deaf Dumb Blind (Summun Bukmun Umyun)(1970年7月録音)(Impulse!) 1970年
- 『テンビ』 - Thembi(1970年11月、1971年1月録音)(Impulse!) 1971年
- 『ブラック・ユニティ』 - Black Unity(1971年11月録音)(Impulse!) 1971年
- 『ライヴ・アット・ジ・イースト』 - Live at the East(1971年録音)(Impulse!) 1972年
- 『ウィズダム・スルー・ミュージック』 - Wisdom Through Music (Impulse!) 1972年
- 『ヴィレッジ・オブ・ザ・ファラオズ』 - Village Of The Pharoahs(1971年~1973年録音)(Impulse!) 1973年
- 『エレヴェーション』 - Elevation(1973年9月録音)(Impulse!) 1974年
- 『ラヴ・イン・アス・オール』 - Love In Us All(1972年~1973年録音)(Impulse!) 1974年
- 『ファラオ』 - Pharoah(1976年8月、9月録音)(India Navigation) 1977年
- 『ラヴ・ウィル・ファインド・ア・ウェイ』 - Love Will Find A Way(1977年録音)(Arista) 1978年
- ノーマン・コナーズと共同名義, 『ビヨンド・ア・ドリーム』 - Beyond A Dream(1978年録音)(Arista) 1981年
- 『ジャーニー・トゥ・ザ・ワン』 - Journey To The One(1979年12月録音)(Theresa) 1980年
- 1980年代
- 『リジョイス』 - Rejoice(1981年録音)(Theresa) 1981年
- 『ライヴ』 - Live...(1981年4月録音)(Theresa) 1982年(ライヴ)
- Heart Is A Melody(1982年1月録音)(Theresa) 1983年
- 『シュクルー』 - Shukuru(1981年録音)(Theresa) 1985年
- 『アフリカ』 - Africa(1987年3月録音)(Timeless) 1987年
- Oh Lord, Let Me Do No Wrong(1987年7月録音)(Columbia) 1987年
- A Prayer Before Dawn(1987年9月録音)(Timeless) 1987年
- 『ムーン・チャイルド』 - Moon Child(1989年10月録音)(Timeless) 1990年
- 1990年代
- 『ウエルカム・トゥ・ラブ』 - Welcome To Love(1990年7月録音)(Timeless) 1991年
- 『愛のクレッセント』 - Crescent With Love(1992年録音)(Evidence/Venus) 1993年
- 『愛のバラード』 - Ballads with Love(1992年録音)(Venus) 1996年
- The Trance of Seven Colors (Axiom) 1994年
- 『ネイマ』 - Naima (Evidence) 1995年
- 『メッセージ・フロム・ホーム』 - Message From Home (Verve) 1996年
- Save Our Children (Verve) 1998年
- 2000年代
- Spirits (Meta) 2000年
- 『ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン』 - The Creator Has A Master Plan (Venus) 2003年
- With a Heartbeat - (Evolver Records) 2003年
サイドマンとしての主な参加作品
[編集]- ジョン・コルトレーン - 『アセンション』『Kulu Se Mama』『Om』『Meditations』『Expression』『Live In Japan』
- ドン・チェリー - 『Where Is Brooklyn?』『Symphony For Improvisers』
- アリス・コルトレーン - 『A Monastic Trio』『Ptah, The El Daoud』『Journey In Satchidananda』
- マッコイ・タイナー - 『Blues For Coltrane: A Tribute To John Coltrane』
- オーネット・コールマン - 『Chappaqua Suite』
- フローティング・ポインツ - 『Promises』
出典
[編集]- ^ “Jazz legend Pharoah Sanders dead at 81” (英語). The Guardian. (2022年9月24日) 2022年9月24日閲覧。
- ^ Allmusic
- ^ 小川充 編「Pharoah Sanders」『スピリチュアル・ジャズ』リットーミュージック〈Jazz Next Standard〉、2006年、16頁。ISBN 4845613247。
- ^ CDjournal.com
- ^ allaboutjazz
- ^ SFGate.com
- ^ 『クラブ・ジャズ入門』リットーミュージック〈GROOVE〉、2007年、210頁。ISBN 978-4-8456-1487-5。
参考文献
[編集]- 小川充「Pharoah Sanders」『スピリチュアル・ジャズ』 小川充監修 リットーミュージック〈Jazz Next Standard〉2006年 ISBN 4845613247