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双曲体積

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
8の字結び目の双曲体積は 2.0298832 である。

数学の一分野の結び目理論において、双曲結び目英語版(hyperbolic link)の双曲体積(hyperbolic volume)は、完備双曲計量に関する結び目補空間の体積である。体積は必然的に有限な実数である。非双曲結び目の双曲体積は、0 と定義されることがある。モストウの剛性定理により、体積は、結び目(絡み目)の位相不変量(topological invariant)である[1]。結び目不変量として双曲体積は、ウィリアム・サーストン(William Thurston)により、幾何化予想との関係で、最初に研究された[2]

同じ双曲体積を持つ双曲結び目は有限個しかない[2]。双曲結び目のミューテーション英語版(mutation)は同一の体積を持つ[3] 従って、同じ体積を持つ例をうまく作ることが可能である。実際、同じ体積の異なった結び目の集合として、任意に大きな有限集合が存在する[2]。実際、双曲体積は、結び目を識別するために非常に有効であることが証明されていて、結び目一覧作成英語版(knot tabulation)を拡張しようとの努力の中で使われる。ジェフェリー・ウィークス英語版(Jeffrey Weeks)の計算機プログラム SnapPea は、結び目(絡み目)の双曲体積の計算に使う、どこでも使えるツールである[1]

さらに一般的には、双曲体積は任意の双曲3次元多様体に対しても定義することができる。ウィークス多様体は、任意の閉多様体(結び目補空間とは異り、カスプを持たない多様体)の中で、可能な限り最小の体積を持っていて、その体積はおおよそ 0.9427 [4]である。

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関連項目

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  1. ^ a b Adams, Colin; Hildebrand, Martin; Weeks, Jeffrey (1991), “Hyperbolic invariants of knots and links”, Transactions of the American Mathematical Society 326 (1): 1–56, doi:10.2307/2001854, MR994161 .
  2. ^ a b c Wielenberg, Norbert J. (1981), “Hyperbolic 3-manifolds which share a fundamental polyhedron”, Riemann surfaces and related topics: Proceedings of the 1978 Stony Brook Conference (State Univ. New York, Stony Brook, N.Y., 1978), Ann. of Math. Stud., 97, Princeton, N.J.: Princeton Univ. Press, pp. 505–513, MR624835 .
  3. ^ Ruberman, Daniel (1987), “Mutation and volumes of knots in S3”, Inventiones Mathematicae 90 (1): 189–215, doi:10.1007/BF01389038, MR906585 .
  4. ^ Gabai, David; Meyerhoff, Robert; Milley, Peter (2009), “Minimum volume cusped hyperbolic three-manifolds”, Journal of the American Mathematical Society 22 (4): 1157–1215, arXiv:0705.4325, doi:10.1090/S0894-0347-09-00639-0, MR2525782 .