コンテンツにスキップ

日本の20世紀遺産

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

日本の20世紀遺産(にほんの20せいきいさん)は、ユネスコ世界遺産文化遺産)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)の日本組織(イコモス国内委員会)が、日本国内における20世紀に建築・形成された文化的財を顕彰すべく選定したもので、2017年平成29年)12月8日に初の選定物件が公表された[1]

概要

[編集]

世界遺産においては、1994年(平成6年)の第18回世界遺産委員会で採択された『世界遺産リストにおける不均衡の是正および代表性・信用性の確保のためのグローバル・ストラテジー(国際戦略)』[2]により20世紀以降の現代建築の登録を推進するようになり[3]、イコモス本部も20世紀国際学術委員会を設置したことをうけ、日本イコモスが国内対象物件の選定を行った。

日本イコモスとしては「直ちに世界遺産になるわけではないが将来的な可能性を示唆し、保護意識を醸成するとともに改修の際に価値を損なわないよう留意する」ことを目的とし、建築物のみならず稼働遺産を含む土木土工構築物都市景観産業生産景観など多岐な分野を網羅している。

選定の評価基準は世界遺産(文化遺産)のクライテリアに準じている[4]

I.人類の創造的才能を表現する傑作

II.ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの

III.現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠

IV.人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例

V.ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例

VI.顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの

2017年選定20選+1

[編集]
番号 名称 副題 都道府県 市区町村 選定評価基準 主な構成資産[5]
00 広島平和記念資料館及び平和記念公園 第二次世界大戦からの復興・原爆ドームのエクステンション 広島県 広島市 IV、VI 広島平和記念資料館本館平和記念公園原爆戦没者慰霊碑平和の灯・敷地)、原爆ドーム西平和大橋平和大橋
01 上野恩賜公園と文化施設群(表慶館、東京国立博物館本館科学博物館東京文化会館他) 境内から公園へ 東京都 台東区 II、IV 東京国立博物館表慶館旧東京音楽学校奏楽堂国立科学博物館国立西洋美術館東京文化会館寛永寺清水観音堂、旧寛永寺五重塔上野東照宮社殿法隆寺宝物館徳川綱吉霊廟勅額門日本芸術院黒田記念館国際子ども図書館
02 国立代々木屋内総合競技場 大規模空間建築の傑作 東京都 渋谷区 I、IV 国立代々木競技場第一体育館第二体育館・管理棟)
03 立山砂防施設群 水系一貫の総合的砂防システム[報 1] 富山県 富山市立山町 II、IV、V 白岩堰堤砂防施設本宮砂防ダム泥岩砂防堰堤群立山砂防工事専用軌道真川の跡津川断層新湯の玉滴石産地殿様林佐々堤
04 黒部川水系の発電施設群 自然と一体化した電源開発の究極[報 1] 富山県 黒部市立山町 II、IV、V 愛本発電所旧山彦橋黒部橋)、旧第1号トンネル宇奈月ダム冬期歩道柳橋柳河原発電所跡地(水圧鉄管・水圧鉄管基礎)、柳橋鉄管路横断橋仏石橋森石橋第一ビワ谷開渠吉野谷暗渠跡曳橋跡曳水路橋第17-18T間開渠黒部峡谷鉄道出し平ダム黒部川第二発電所目黒橋・水圧鉄管・水槽・猫又取水口)、狢谷橋小便谷橋鐘釣橋ウド谷橋小屋平ダム(取水口・沈砂池)、小黒部橋欅平PC桁橋黒部川第三発電所(水圧鉄管路・鉄管路隧道・調圧水槽)、竪坑エレベーター水平歩道上部軌道水路隧道仙人谷ダム(取水口・沈砂池)、黒部川第四発電所(放水路・水圧鉄管・調圧水槽)、インクライン黒部ダム旧日電歩道黒部トンネル導水路関電トンネル
05 瀬戸大橋 吊橋技術のシンボル[報 2] 香川県 坂出市 I、II 南備讃瀬戸大橋北備讃瀬戸大橋
06 青函トンネル 世界最長の海底トンネル[報 3] 北海道青森県 今別町知内町 I、II 青函トンネル
07 舞鶴海軍施設と都市計画 生き続ける軍都としての格子状街路と赤煉瓦の施設群 京都府 舞鶴市 IV 軍都の歴史を伝える格子状街路旧海軍の赤煉瓦建造物群旧軍事施設群要塞・隧道・橋梁・水道施設旧北吸浄水場与保呂浄水場])
08 南禅寺界隈の近代庭園群 琵琶湖疏水を活用した20世紀の和風庭園・住宅群・都市周縁部開発[報 4] 京都府 京都市 V、IV 琵琶湖疏水近代庭園群と水流ネットワーク・水路閣庭園内の建造物対龍山荘無鄰菴白河院清流亭野村碧雲荘有芳園
09 隅田川橋梁群築地市場他を含む復興関連施設群 関東大震災からの復興施設と近代橋梁群による隅田川の景観 東京都 中央区江東区墨田区 IV、VI 築地市場勝鬨橋永代橋清洲橋両国橋蔵前橋厩橋駒形橋吾妻橋東京都慰霊堂本堂東京都復興記念館横網町公園
10 迎賓館赤坂離宮 明治の近代化における洋風建築と迎賓館への保存再生 東京都 港区 II、IV 赤坂迎賓館及び附属建物と内装装飾、外構、附属施設(門・鉄柵・門衛所等)
11 聴竹居 伝統を生かし、近代の環境工学の思想を取り入れた傑作 京都府 大山崎町 I、II 聴竹居(本屋・閑室・増築)
12 箱根の大規模木造宿泊施設群 日本古来の伝統構法を生かした温泉旅館建築と景観 神奈川県 箱根町 III、IV 福住旅館金泉楼萬翠楼ほか、福住樓主屋ほか、元湯環翠楼本館南棟ほか、富士屋ホテル本館ほか、函嶺洞門千歳橋旭橋国道1号箱根国道箱根湯本 - 宮ノ下区間)、箱根登山鉄道登山電車箱根湯本駅 - 強羅駅間]、箱根湯本駅塔ノ沢駅宮ノ下駅
13 肥薩線(旧鹿児島本線 黎明期鉄道技術(英独米)の日本的展開[報 5] 熊本県宮崎県鹿児島県 八代市芦北町球磨村人吉市えびの市湧水町霧島市 II、IV、V 肥薩線第一球磨川橋梁第二球磨川橋梁人吉機関車庫大畑ループ・スイッチバック矢岳第一トンネル大隅横川駅舎嘉例川駅舎
14 鶴岡八幡宮境内旧神奈川県立近代美術館 社寺境内に挿入されたモダニズム建築の代表 神奈川県 鎌倉市 I、IV 旧神奈川県立近代美術館本館鎌倉国宝館本館鶴岡八幡宮境内
15 有田文化的景観/町並、産業・文化施設群 20世紀に継続発展した伝統産業景観の代表[報 6] 佐賀県 有田町 III、V 内山伝統的建造物群保存地区黒牟田・応法地区、古窯群・窯元・店舗(今泉今右衛門窯香蘭社深川製磁岩尾磁器井上萬二窯柿右衛門窯青木龍山窯源右衛門窯)、文化施設群(佐賀県立九州陶磁文化館佐賀県窯業技術センター有田町歴史⺠俗資料館有田陶磁美術館歴史と文化の森公園・焱の博記念堂
16 旧朝倉邸と代官山ヒルサイドテラス 近代建築理論の具現化と民間による都市周縁部開発(メタボリズム運動における群造形理論の具現化) 東京都 渋谷区 II、IV 代官山ヒルサイドテラス(A-G棟・アネックス・プラザ・敷地)ヒルサイド・ウエスト(A-C棟・敷地)、デンマーク王国大使館及び敷地旧朝倉邸
17 小岩井農場 欧米牧畜業の近代技術を導入し営まれ続けている農場コミュニティの景観[報 7] 岩手県 雫石町滝沢市 II、V 下丸地区(本部事務所本部第一号倉庫本部第二号倉庫乗馬厩倶楽部ほか)、中丸地区(四階建倉庫玉蜀黍小屋4棟・耕耘部倉庫小学校ほか)、上丸地区(第一号牛舎第二号牛舎第三号牛舎第四号牛舎種牡牛舎育牛部倉庫第一号サイロ第二号サイロ秤量場冷蔵庫社宅建築群ほか)
18 西条の酒造施設群 20世紀に継続発展した伝統産業景観の代表[報 8] 広島県 東広島市 III、V 西条酒蔵通り西条酒の酒蔵・土蔵・店舗・事務所・主屋(賀茂鶴酒造福美人酒造白牡丹酒造⻄條鶴醸造⻲齢酒造賀茂泉酒造山陽鶴酒造小島屋)、煙突・門柱・井戸
19 東海道新幹線 高速・大量輸送旅客鉄道システムの原点 東京都神奈川県静岡県愛知県岐阜県滋賀県京都府大阪府 千代田区港区品川区大田区川崎市横浜市大和市藤沢市綾瀬市海老名市寒川町平塚市大磯町二宮町小田原市南足柄市真鶴町湯河原町熱海市函南町三島市長泉町沼津市富士市静岡市焼津市藤枝市島田市牧之原市菊川市掛川市袋井市磐田市浜松市湖西市豊橋市豊川市蒲郡市幸田町西尾市岡崎市安城市知立市刈谷市大府市名古屋市清須市稲沢市一宮市羽島市安八町大垣市垂井町関ケ原町米原市長浜市彦根市多賀町甲良町豊郷町愛荘町東近江市近江八幡市野洲市守山市栗東市草津市大津市京都市向日市長岡京市大山崎町島本町高槻市摂津市大阪市 I、IV 東海道新幹線(馬込架道橋相模川橋梁旧鴨宮基地⻄相模周波数変換所丹那トンネル富士川橋梁日本坂トンネル矢作川橋梁第2六番町架道橋鳥飼車両基地新大阪駅
20 伊賀上野城下町の文化的景観 旧城下町の都市景観にあわせた近代建築群の代表例 三重県 伊賀市 IV、V 史跡上野城その城下町俳聖殿伊賀文化産業城ほか)、近代現建築群(旧上野市庁舎[伊賀市南庁舎]・白鳳公園レストハウス上野⻄小学校体育館

脚注

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ 「日本の20世紀遺産20選」を選出しました 日本イコモス国内委員会 (PDF)
  2. ^ 「グローバル・ストラテジー」について - 文化庁
  3. ^ 『すべてがわかる世界遺産大事典〈上〉』(マイナビ出版)2012年
  4. ^ 世界遺産の登録基準 - 公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟
  5. ^ 日本の20世紀遺産20選”. 日本イコモス国内委員会. 2019年9月4日閲覧。

関連報道

[編集]

関連項目

[編集]