NMEA 0183
NMEA 0183 は、船舶用電子機器間の通信のための電気およびデータの複合仕様であり、音響測深機、ソナー、風向風速計、ジャイロコンパス、オートパイロット、GPS受信機(GNSS受信機)などの機器で使われている。GPS/GNSSについては、洋上でなく地上でも同じ仕様が使われている。
NMEA 0183は、米国海洋電子機器協会(National Marine Electronics Association, NMEA)によって定義・管理されている。
NMEA 0183は、NMEA 0180とNMEA 0182の後継である。レジャーマリンではゆっくりと新しいNMEA 2000規格に移行しつつあるが[1][2]、商業船舶ではNMEA 0183が主流である。
詳細
[編集]電気的な規格は EIA-422 だが、NMEA-0183出力を持つほとんどのハードウェアは、EIA-232 (RS-232) ポートを駆動できる。標準仕様は絶縁された入出力を要求しているものの、この要件を満たさないハードウェアも多々存在する。
NMEA 0183は、単純なASCIIのシリアル通信プロトコルであり、データがどのように、1つの「トーカー (talker)」から複数の「リスナー (listener)」へと同時に「センテンス(sentence)」の形で送信されるかを定めている。
中間エクスパンダを使うことで、トーカーはほぼ無制限の数のリスナと一方向の通信を行うことができ、マルチプレクサを使うことで複数のセンサーが1つの計算機ポートに送信することができる。
この規格は、アプリケーション層において、各センテンス(メッセージ)タイプの内容も定義しており、これによりすべてのリスナーがメッセージを正確に解析することができる。
NMEA 0183は RS422 トランスポートのみを定義しているが、NMEA0183のセンテンスをUDPデータグラムに入れ(1パケットに1センテンス)、IPネットワークで送信する事実上の標準も存在する。
NMEA規格はプロプライエタリの規格であり、2020年9月現在、2000米ドル超で販売されている(NMEAの会員を除く)[3][4]。しかし、そのほとんどは公開された情報からリバースエンジニアリング済みである[5][6]。
シリアル通信 (データリンクレイヤ)
[編集]変調レート | 4,800 |
データビット | 8 |
パリティ | なし |
ストップビット | 1 |
ハンドシェーク | なし |
NMEA-0183HSという規格のバリエーションがあり、変調レートを38,400と規定している。これは、AIS装置(自動船舶識別装置)で一般的に使用されている。
メッセージ構造
[編集]- 送信データはすべて、0x20(スペース)から 0x7e (~) の間の印刷可能なASCII文字である。
- データ文字は、予約文字(後述)を除く上記全ての文字である。
- 予約文字は、NMEA 0183 によって次の用途に使われる:
ASCII | 16進数 | 10進数 | 用途 |
---|---|---|---|
0x0d | 13 | キャリッジリターン | |
0x0a | 10 | ラインフィード | |
! | 0x21 | 33 | カブセル化センテンスの開始区切り |
$ | 0x24 | 36 | 開始区切り |
* | 0x2a | 42 | チェックサム区切り |
, | 0x2c | 44 | フィールド区切り |
\ | 0x5c | 92 | TAGブロック区切り |
^ | 0x5e | 94 | ASCII文字を16進表記するための区切り |
~ | 0x7e | 126 | 予約済み |
- メッセージの長さは最長82文字。これには開始文字($または!)と、終了の <LF> を含む。
- 各メッセージの開始文字は、'$'(従来のフィールド区切りのメッセージの場合)または '!'(特別なカプセル化が施されたメッセージの場合)のどちらか。
- 次の5文字は、トーカー(2文字)とメッセージの種類(3文字)を識別する。
- 続くすべてのデータフィールドはカンマで区切られている。
- データがない場合、対応するフィールドは空である(つまりカンマとカンマの間に文字を含まない)。
- 最後のデータフィールドの直後に現れる文字はアスタリスクであるが、これはチェックサムが提供された場合のみ含まれる。
- アスタリスクの直後には、2桁の16進数で表されるチェックサムが続く。チェックサムは,$と*の間にあるすべての文字のASCIIコードの排他的論理和である。公式仕様によるとチェックサムはほとんどのデータセンテンスで任意だが、RMA、RMB、RMC では必須。
- <CR><LF> でメッセージが終了する。
例として、軌跡到着アラームは以下の形式をもつ:
$GPAAM,A,A,0.10,N,WPTNME*32
これが表す内容は、
GP | トーカID: GP はGPS |
AAM | 到着アラーム |
A | 到着円進入 |
A | 垂線経過 |
0.10 | 円半径 |
N | 海里 |
WPTNME | 軌跡名 |
*32 | チェックサム |
また、AISメッセージの例としては:
!AIVDM,1,1,,A,14eG;o@034o8sd<L9i:a;WF>062D,0*7D
GPS, GNSS でのメッセージ種別の例
[編集]主要なトーカーID
- GQ - 準天頂衛星システム (QZSS)
NMEAメッセージは主に以下のセンテンスを含んでいる:
種類 | 説明 |
---|---|
$Talker ID+GGA | 位置、時刻、Fixに関するデータ |
$Talker ID+GLL | 地理的位置 - 緯度経度 |
$Talker ID+GSA | DOP と 有効な衛星 |
$Talker ID+GSV | 視界にある衛星 |
$Talker ID+RMC | 最小限のナビゲーション情報 |
$Talker ID+VTG | 地表における移動 |
ベンダー拡張
[編集]ほとんどのメーカーは、保守や診断の目的で、標準のNMEAセットに加えて、特別なメッセージを製品に含めている。拡張メッセージは、"$P" で始まります。これらの拡張メッセージは、標準化されていない。
NMEA 0183データを扱うソフトウェア
[編集]- GPS、GNSSソフトウェア
- NetStumbler
- Rand McNally StreetFinder
- Magic e-Map
- NemaTalker NMEA instrument simulation
- Microsoft Streets & Trips
- Microsoft MapPoint
- Serotonin Mango M2M[7] (suitable for NMEA compliant weather stations)
- MapKing
- gpsd - Unix GPS Daemon
- GPSy X for Mac OS X[8]
- Turbo GPS PC/PPC[9]
- GRLevelX Weather Suite[10]
- Google Maps Mobile Edition (Java ME Devices)[11]
- JOSM - OpenStreetMap Map Editor
- PolarCOM - a set of digital and analog NMEA instruments[12]
- Avia Sail - PC instruments for both NMEA 0183 and NMEA 2000 [13]
- ゼンリン電子地図帳[14]
- スーパーマップル・デジタル 10(昭文社)
- カシミール3D[15]
関連項目
[編集]参照
[編集]- ^ “NMEA 0183 vs NMEA 2000” (November 2018). 2020年10月20日閲覧。
- ^ Spitzer, Steve. (May 2009). “NMEA 2000 white paper”. 2020年10月20日閲覧。
- ^ “Publications and Standards from the National Marine Electronics Association (NMEA) / NMEA 0183”. NMEA (November 2008). 2013年10月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月21日閲覧。
- ^ “National Marine Electronics Association - NMEA”. www.nmea.org. 2020年9月24日閲覧。
- ^ Raymond, Eric S.. “NMEA Revealed”. 2022年12月30日閲覧。
- ^ Dale DePriest. “NMEA data”. 2020年10月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月20日閲覧。
- ^ http://mango.serotoninsoftware.com/
- ^ http://www.gpsy.com/
- ^ http://www.turboirc.com/tgps/
- ^ http://www.grlevelx.com/
- ^ https://www.google.com/mobile/default/maps.html
- ^ http://www.polarnavy.com/main/prod2
- ^ http://www.aviasail.com
- ^ ゼンリン電子地図帳Zi12 機能紹介 (株)ゼンリン
- ^ カシミール3D 初心者ガイド2.GPS機種の選定, DAN杉本
外部リンク
[編集]- National Marine Electronics Association
- NMEA's website about NMEA 0183
- NMEA Protocol Conversion
- NMEA data information
- Sirf-Chipset NMEA data reference manual
- LGPL C library for parsing and generation of the NMEA protocol
- Open Source (New BSD License) C# library for parsing NMEA protocol
- NMEA Specifications at APRS Info
- MTK proprietary NMEA extensions